1月29日に開催された「フォーラムPVかながわ2023」はオンラインによるイベントでしたが、多くの方にご参加いただき大変好評でした。ご参加いただきましたみなさまにはお礼申し上げます。ここでは国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員の歌川学様に「地域の脱炭素転換と再エネ利用拡大」という講演を、またネクストエナジー・アンド・リソース株式会社シニアマネージャーの小野広弥様には「現状の太陽光パネルリユースリサイクルについて」という講演をいただきました。

遅くなりましたが、ここで行われた講演の資料を公開するとともに、講演に寄せられた質問に対し、講師のお二人からご回答をいただいておりますので、ここでその結果を公表いたします。
【資料】
歌川学氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員)

小野広弥氏(ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社シニアマネージャー)


歌川様の講演での質問と歌川様の回答

<質問①>再エネの変動対策の蓄電池、揚水発電、系統連携線強化、需要コントロールなどの強化の必要性はどう考えるのでしょうか、費用含め。
<回答>
2030年に国の基本エネルギー計画では火力42%、残り58%、国の計画ではその中には原発も入っているが、少なくとも関東では全部再エネだと想定している。再エネ50%を超えたときには様々な柔軟性の対策をしていかなければならない。蓄電池については防災施設には設置型蓄電池があった方がいいが、それ以外ではこれから普及する電気自動車の蓄電池をうまく使っていくとコストが安く対策できる。WWFジャパンの費用算定では、送電線などの統合費用は今後30年間で9兆円、kWhあたり0.3〜0.4円/kWh。揚水発電は今より増やす必要はなく、増やすのも難しい。
再エネの適地である北海道、東北から関東への地域間連系線の強化、西日本では中国、四国、九州から中部、関西の大消費地への地域間連系線の強化などが課題になる。送電線計画とそのためのコストを試算したNGO(自然エネルギー財団、環境ウォッチ東京などがあり、以下の数字は後者)によると、北海道から九州まで太い直流送電の地域間連携線を引いたときに日本海側と太平洋側に2本の海底ケーブルを引いた場合に5〜24兆円(海外実績単価。24兆円は最高値)で、これを仮に5年で建設するとすれば単年度工事費は今の電力設備投資の範囲内であるとのことだ。
需要コントロールについては、前の日の夕方にはかなり詳しい予測が送電会社でされるので、それを公開して翌日朝か夕方にひっ迫が予想される時には、利用率の低い大型発電所をたくさん維持する(かなり費用もかかる)方法ではなく、需給調整契約で1時間前に通告をして電気を止める代わりに安い電気料金を適用するか、市場で報奨金付きで需要を抑えてもらうなどの費用効果的な需要削減で、省エネ再エネ転換を行っていくことが可能である。

<質問②>再エネが多い新電力が増えるためには、FITが市場連動でなくなることが必要と思いますが、今後の動向を教えてください。あるのでしょうか?
<回答>
今FITは、買うところは強制的に市場連動になっている。それによってFITの再エネ電力を購入し供給する小売り会社に大変不利な状況になっていると思う。政府の審議会では市場連動に転換していく方針で、こうした制度を見直すことは現段階でなかなか難しいと思うが、特に地域で再エネを増やしていくための小売り、規模の小さな小売りを確保していくために市場連動でないような、以前のようなもっと安定した市場にしなければいけない、卸電力市場が暴れてそれがFITにまでそのまま連動してしまうようなことは避けなくてはならないと思うので、そうした制度の改善を今後考えていかなくてはいけないと思う。ただ国の審議会の資料を見る限り、そうした議論は今のところ行われていないと思う。経産省でも今後の電力政策の方向性を検討していてパブリックコメントもしていたが、残念ながらこの政策課題解決については出てきていないと思う。

<質問③>東京都の一般住宅屋根の太陽光パネル設置義務化の決定をしましたが、この結果、対象のすべての住宅に取り付けられた場合の省エネ、再エネ率はどのように向上するのかそのシュミュレーションをご存知であればご教示お願いします。
<回答>東京都の新制度では、新築の設置義務になるのは大口建築事業者のみだが、仮に新築の住宅と建築物全てに太陽光発電が設置されたとすると、2050年までに新築で業務家庭部門の約半分、電力消費全体の約4割が新築建築の太陽光になると試算できる。当面はコストも購入電力の約半額で電力を得ることができ、今後も再エネコストは低下が予想される。

<質問④>私の住む自治体でも脱炭素ロードマップを作成しましたが、その後の進展が見えてきません。歌川様のお話で具体的に何に取り組めば2030年、2050年にどこまで成果が上がるのかよくわかりました。私の地元でもご講演をお願いすることはできますか。
<回答>
今年は全国で報告している。気軽に声をかけていただければ報告に伺いたい。


小野様の講演での質問と小野様の回答

<質問①>撤去の際の費用が高額になると聞いています。今自治会館への太陽光発電設置をお勧めしていますが、撤去費用がわからないと住民に説明できないと言われています。どのくらいの費用がかかるのでしょうか。また、PV CYCLE JAPANの取り組みは今後広まっていくでしょうか。
<回答>
中間処分業者にダイレクトに処分に出す場合は相場が3,000円から4,000円くらいである。公民館など建物の屋根についている場合は、撤去費用の方が高くなる傾向にある。撤去の仕方にもよって、解体業者が入る場合は足場を組むので足場代が結構かかる。電気屋に頼むとポンポン屋根に上って外してしまったりするけれど、安全性の面からそれはやらない方がいいとの話もあって、東京都や山梨県の検討会でも話をするが、どれがいいというのはまだ決まっていない。すべてにおいてまだ廃棄が少ないので、いっぱい出てくればリサイクルはあっという間に進む。困っていて物量があるとボリュームディスカウントが効いて将来的には1,000円とか1,500円とか、もっと安くなるかもしれないが、現時点では1枚3,000円4000円の処理費がかかり撤去費用がかかり、かつそれを処分場に運ぶ運搬コストがかかってしまう。将来的には安くなると思う。
PV CYCLE JAPAN の取り組みはぜひ広げたいと思っている。太陽光の場合、情報がエリアでバラバラである。例えばどこで災害が出て何枚のパネルが廃棄されたか、どこもうまくカウントできていなくて、環境省や経産省など国が統計を取っていないので廃棄統計がないと手が打ちづらい。なるべく一元管理しようということで、環境省、経産省にPV CYCLE JAPAN という取り組みをするので協力してほしいということで、今連携しているところである。

<質問②>有害物質はどんなものが有るのでしょうか
<回答>
一番言われるのが、ガラスの中に入っているアンチモンという物質で、昔はヒ素が入っていた。アンチモンやヒ素はガラスを作る工程で泡消しのために使われる。またハンダに鉛が含まれているし、CISだとセレンやインジウムが含まれている。いずれも微量ではあるが、それらを管理するためにメーカーに表示をしてもらっている。

<質問③>太陽光発電のネットワーク団体としてのPV-NetやCELCなどには、1997,8年からと長い期間の家庭が多くあります。よって、パネルの寿命からすると今後一気に廃棄対象のパネルが出てきそうです。是非そのような太陽光団体と提携していただければ、双方のメリットに適うのではないかと思います。いかがでしょうか?
<回答>
なるべく連携していきたいと思う。いろいろな自治体の委員をしていて、解体業者や廃棄物連合会、太陽光の団体、ハウスメーカーなどと共有していこうと話をしているが、いやいや、廃棄が出ないんですよと言われてしまう。2019年問題とか騒がれたけれど実際は出てこなかった。住宅は数十年もっているので、2019年にFIT切れの人が大量に出ているし、パワコンが壊れている人も多いが、何十万円もかけて外す人はなかなかいなくて、そのまま付けていることが非常に多い。まれに外すのは、屋根をふき替えるとか家の改築をするとかで足場を組むチャンスがある時に並行してされるが、ネックとなるのはやはり足場代だと思う。メガソーラーもあと10年で初期のFITが20年経過するので廃棄パネルが大量に出るだろうと言われているが、私は出ませんと言っている。リプレイスはあるが、20年たってその発電所を全部たたんで更地にするかというと、そういうことはたぶんない。
今、ただでさえメガソーラーが作れない状況なので、これで導入量を増やすとなると住宅用を増やすか、メガソーラーを増強するとか、そういった施策しか打てないので、事業継続する事業者にはいろいろな支援が出てくると思う。廃棄量が一時的に出たりリプレイスするときに廃棄費用の積み立てをしているところから払い出しができるとか。基本的にはずっと太陽光を増やしていかなくてはいけない。その過程の中では壊れるものを交換するものもあるので、そこでリユース、リサイクルというものは存在する。それに対し今、電力会社各社が同じ発想をもって進みたいということで連携している。

<質問④>回収したパネルの何%くらいがリユースにまわせますか?
<回答>
性能的なもので言うと、外観に異常がなくて、例えば100枚来た時に最初の何枚か測って大丈夫なら基本的には9割以上使える。ただ100枚来て何枚か測って落雷で中がやられているものは全部だめだし、9割くらい使えるものがあったとしても、リユース品として販売するときに出力が100Wしかなかったらなかなか売れない。リユースで購入したいというターゲット層には250Wを超える出力でないと販売しずらい。性能的に使えるといってもあまりに低出力のものは販売しないようにしている。

<質問⑤>今後PVCYCLEの回収拠点としては、どのような場所を想定されておりますか?
<回答>
一応全都道府県に行きたいと思っているが、現時点では徐々に増やしている。廃棄が多ければ一気に行くが、あまり先に回収拠点を用意してしまうと物が入ってこないのに保管コストとか場所のコストがずっとかかり続けることになる。できれば自治体の遊休地で保管させてもらえるところがあれば、そこに集めてもらって集まり次第業者が回収するというようなスキームを作っていきたい。今は長野県、愛知県、宮城県などで実証をしているが、県単位で試験的にやって、いいモデルロールができるといい。神奈川県でもぜひやりたいし、自治体や地場の業者の方たちと連携しながら広げていきたいと思っている。

<質問⑥>神奈川県は、是非対象に。黒岩知事は、太陽光発電、再エネに関心が高いですから、、、
<回答>
みなさんの力でぜひ知事さんにこういう話をしていただきたい。今川崎市で、東京都に追随するような義務化の話が進んでいるので、そういったものを皮切りに試験的にでも、エリアを区切って回収拠点を設けられればと思う。藤沢とか特に導入量が多くまちづくりとして太陽光を入れているので、ああいうところは回収拠点のモデルとしてはすごく美しいと思うので、ピンポイントで話ができればと思っている。

<質問⑦>リユース商品の製品保証は、どのようにされているのですか?
<回答>
保証はものによって年数を変えたりするが、シミュレーターで検査してA級品には性能に対する10年保証を付けている。シミュレーターでA級品というのは基本的には新品の性能にすると90%以上は出ているものなので、もし80%切るような状況であれば、同等品に替えるか、もしくは返金するというような保証をしている。ただ、今までそのケースはほぼないので、きちんと検査すれば長期間使えるものだと私たちは思っている。

<質問⑧>EUのPV-CYCLEのようなメーカーのデポジットのような方法は日本では難しいでしょうか?環境省や経産省での制度化を期待する以外はないでしょうか?
<回答>
デポジットの件はさんざん話をしたのだが、進まない一番の原因は中国のパネルが市場を席巻しているので日本企業はあまり梃入れをしたくないというところである。まず中国企業がきちんとそういうことをするのであれば日本企業もやりますというスタイルをされるので説得ができない。現時点からデポジットしていってもすぐ廃棄が出ないし、家電リサイクル法の時も大変だったので家電メーカーが前受け金をとるというようなことは進みづらいところがある。軌道に乗るまでは国の支援、補助金がいるのかとは思っている。